Bagdad Café

 WilliamsからBarstowまでの道のりは意外と長い。6時間近くかかるのだ。Newberry springはBarstowの30分手前に位置する。Newberry springのExitを降りて、とりあえずずっと進むが、特に町らしきものはない。この辺はすでにゴーストタウンだというが、まあそうだろう。注意深く道路の両脇を見ながらゆっくり走っていると、右手にの看板を見つけた。At Last!危うく通り過ぎるところを急いで反転、駐車する。15時半。ここがあの映画の舞台にもなったBagdad Caféだ。

 そのまま中に入ってみる。はるか昔に映画を見たせいか記憶が薄れている。こんな感じだったっけ?Caféの中は、予想以上に人でにぎやかだった。「座ってもいい?」というと女主人は「どこでも空いているとこに座って」と。とても気さくな印象を受けた。名前はAndorea。席に座ってメニューをみる。今日はいままで昼食をとっていないのだ。せっかくだから、ここで食べようかと、メニューを見ていると、突然、大量の人がやって来た。どうやら観光バスでここに来た一群らしい。カフェのトイレを借り、店内の写真を撮り、あるものはドリンクを頼み、30分は動く隙間もないほどの大変なにぎわいになった。

 彼らが去っていくと、店内はまた穏やかな空間に戻り、僕はスプライトとチーズバーガーを注文した。僕の隣にはカップルが座っている。2人はAndoreaと話を始めた。やがて僕のその会話の中に入っていった。

 20分もしない内にまた別の観光バスの一群が入ってきた。フランスからの旅行グループらしい。どうやらここは観光名所になっているらしい。これだけぽつんとしたところにあるのにね。びっくり。それでもAndoreaは、たくさんの人ごみの中で、てきぱきと、それでいて誰にでも気さくに声をかけていく。

 でも、僕と横に座っていたカップルは集団が去るまでずっと辛抱強くカフェにいた。2人はちょっと雰囲気が違うカップルであった。カメラもEOS5Dだったかな、を持っていた。彼らがAndoreaとの会話に耳を傾けると、Andoreaは2002年に夫を亡くし、息子さんも亡くしたらしい。そんな話をしているAndoreaの顔には悲しみをたたえていた。それでもこの店を切り盛りしていくなんてことを言っていた。そんな気丈なAndoreaに2人も僕も心打たれた。
 Andreaは、このカフェに寄せてくれたたくさんの手紙や写真を閉じたファイルを僕たちに見せてくれた。たくさんの感謝の言葉がそこに書かれていた。英語でtouched(感動した、心動かされた)というのは、こういうときに使うんだろう。感動以外の何者でもない。最後に一緒に写真を撮ってくれた。ちょっとだけ寄っていくつもりが2時間以上もいてしまった。カップルともグッバイをして彼らは東へ進んだ。僕は西、Barstowまでは後10分ほどだ。

 車中で、僕はAndoreaに手紙を書こうと思った。

Comments

Popular posts from this blog

アメリカはトラックの国

11日目の概略

Santa Rosaのワイン畑